は強い言葉を出しながら、その奥では哀願しているような父親の姿を見ると、辛い思いで胸が一杯になって来た。
「お父さんの考えていらっしゃるほど、文学というものは賤《いや》しいものではありません。どうぞ心配しないで下さい!」
「それではやめないと云うのか?」
浩は迷った。「止めないのはもちろんのことではある。が、父親にそう云ったらどのくらい、たとい考え違いであっても、悲しむか分らない。それなら、止めますと云うか!」彼の本心が承知しなかった。一時逃れのごまかしをすることは、互のために真の意味で何にもならぬ。自分を偽ることは堪えられない。こういうときに、「止めます」と云いきる人の例はたくさん知っている。
けれども……。浩はキッパリと、
「止められません!」と云った。
「止められん?」
「ええ止められませんお父さん! あなたの心持はよく解ります。けれども……けれども書くことも、読むことも止めてしまったら、何に励まされて、辛いことや苦しいことを堪えて行くんでしょう? ねえお父さん! あなたも辛いだろうが、僕だって決して楽じゃあないんです!」
浩はポロポロと涙をこぼした。父親に対しての愛情と、芸
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