子が来かかって、入れて欲しそうな顔をする。歌っていた子達がそれと見ると、急に丸くなって「ねっきりはっきり、これっきり、あとから来る者入れないぞ」と叫びながらまとまってしまう。除《の》けものにされた子供は、そんな仲間を憎まないだけ心が善くなるか、それ等を向うに廻して勝つだけ、悪くも強くもなるかしなければならないようになって来る。
庸之助の現在の位置は、そうではあるまいかと、浩は思った。大きな会社とか商店とかいう、希望者の多いところでは、彼一人断わるということに何の痛痒《つうよう》も感じないのだ。世間多数の人々を対手にして行くには、対手になる人がちょっとでも不安や不愉快に思うものを、たといそれがどんなに些細なことでも、保持して行くことは、会社として商店として不得策なことは、彼にもよく分っている。「取締りの人は、彼を弁護し、或は賞揚して置いたかもしれない。けれども突然彼が辞した理由を説明すれば、万事は定まってしまう。ほんとにもう何も云うことはないというほど、きっぱり定まってしまうのである。」彼は、妙に悲しいような、大きな愛情と大きな反感に縺《もつ》れた心持に打たれたのであった。
それから
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