した。
自分で自分をどう処置して好いか解らないほど、強い激しい、内心の動揺や争闘に苦しみぬくとき、浩はあまり辛いと、ただの一秒でも好いから、何も思いも感じもしなくなってみたいと、冗談でなく思う。何一つ音のしない、物のないところに、目を瞑《つぶ》って坐っていたくなる。けれどもそれならばといって、続々起って来る疑問や感激や思想の変化に伴って来る一種の不安定さなどを、回避しようかといえば、そうではない。彼の衷心では努力、ただ努力と絶叫している。「どんなに辛くても辛棒しろ。じッと踏みこたえて前へ進め。努力、お前を改善するのは努力だけだぞ! しっかりしろ我が若者!」極度な静寂を求める心の一面には、高々とこう叫ばれる。「そうだ! ほんとうにしっかりしろ、我が心※[#感嘆符二つ、1−8−75]」彼は感激して涙をこぼす。ますます努める。彼の心は苦しむ。いよいよ苦しんで突き通るべきいろいろのものにぶつかる。
それ故、彼はどのような苦痛――外面的にも内面的にも――が現われようが、それに負けて引き下る自分を予想し得ない。従って彼は何事も諦めきれない。失敗した人が、どうせ駄目なことは第三者の目から見れば明
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