!」
「かまうない※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
庸之助は怒鳴った。
「かまうない! 畜生※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
けれども、もう危いと彼は直覚した。もう危ない。わざと目の前に出された猪口の中で、黄色く光っている液体に向って、制御しきれない勢で、心がころげて行くのを感じた。ちょうど止め度を失った車輪が、急傾斜な坂道をころがり出した通りに。
庸之助はいても立ってもいられない心持になって、いずまいをなおしたとき、よろよろする一人が猪口と徳利を持って彼の前に進んで来た。
突出した両手のなかで、猪口の縁と、徳利の口がカチカチとぶつかり合う。コクン、コクン酒が猪口に流れ出す! 庸之助は我にもあらず突立ち上った。顔をのめり出させて、凝視する眼が、貪婪《どんらん》に輝やいて酒の表面に吸い寄せられていた。極度の緊張と激昂とで、庸之助は傍でガヤガヤ騒ぐ物音などは、耳にも入らなかったのである。
「飲め!」
彼はボタボタ雫をたらしながら、庸之助の口の辺へ猪口をさしつけた。痛いほど高い、高い香りがギーンと頭へ響く。
「飲めったら!」
「※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
庸之助は、い
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