正しのような手紙を発送させたのである。
出来るだけ委《くわ》しくと、なおなおがきの付いた手紙を受取ったとき、孝之進はお咲を入れて置く部屋の準備にせわしかった。家族以外の者さえ見ると、荒れ騒ぐ彼女を、一番奥の一間に監禁しようとしていたのである。部屋中の器物を皆持ち出して、踏台をあちらこちら持ち運びながら、彼は釘、鋲などと、どんな小さいものでも、およそ表面の突起となっている物という物を抜き取った。武器になりそうなもの――若しかすれば彼女自身に向って振うかもしれない――を、細心な注意を用いて、取りのぞいた。
お咲をそこに入れて、四枚の仕切りになっている板戸の前に、自分の床を持って来て番をするつもりなのである。戸にはうちの見える一尺ほどの無双が付いていた。老人の力で、それらの仕事を三日もかかって仕上げると、孝之進はさり気なく、娘をその部屋に連れ込んだ。そしてあちらから明けないように、板戸に心張棒をかったとき、愛する者の棺に釘をうつときのような哀愁が、彼の心を押し包んだ。
「さて俺がここで番をするかな」
戯談《じょうだん》のように軽く云おうとしながら、口を動かすと、さも悲しみ疲れているらし
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