は急にお腹の下の方から、真赤に燃えさかっている火の玉が、グングン、グングンとこみ上げて来るのを感じた。熱い! 熱い! 体が焦げそうだ! 苦しい。火の玉が上って来るに連れて、体中が、ちぎれちぎれに裂けてしまいそうだ。息がつまる。あ! 胸の下まで来た! 中頃まで……。お咲は苦しまぎれに夢中になって、その恐ろしい火の玉を吐き出そうとした。胸をかきさばいたり、喉に指を突込んでかきまわしたりした。体中であばれまわった。が、玉はずんずん上って来る。グングン、グングン火を燃やしながら上って来る。ああ苦しい、あ! 死にそうだ! お咲は両手で口中を掻きまわしたが、とうとう火の玉が喉までこみあげてしまった。息がつまる! 体中燃え立つ!……。お咲は気が違ってしまったのである。
 咲二のこと、次でお咲の容態を一時に知らされた浩は、どうしてもほんとにされなかった。それほど僅かの日数の間に人一人が気違いになるということは信じられなかった。彼は小石川へ聞きに行った。そこにもまた浩の得たと全く同様な驚愕と憂慮が漲っていた。突然に起って来たあまり不幸過ぎる事件は、皆の心に疑念を起させて、もう一度こちらから、孝之進に訊き
前へ 次へ
全158ページ中125ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング