持っていることは、自分が悪太くなりぬくに妨げとなると、感じていたのである。――のことも、無理しない感情で考えることが出来た。死刑囚がいざ殺されるというときになって、頸に繩を巻かれても、彼の心には何か生に対しての希望がある。たとい漠然とはしていても何か今ここで断たれっきりの生命ではないことを感じている。それでなければジッと繩を巻かれていられるものではあるまいなどと、かつて浩が語ったときには、未練だとか、膽《きも》が小さいとか、嘲笑《あざわら》ったけれども、このごろはそうでもあろうという気がして来た。そして、浩はいい友達であったということも感じて来たのである。
思いがけない庸之助から、葉書を貰ったとき、浩は快い驚きにうたれた。どうぞ暇だったら話しに来てくれなどと、見なれた字で書かれてあるのを見ると、彼はそのまま、うっちゃって置けない心持がした。まるですべての態度が一変した彼を見たばかりには、浩は自分が信じられないほどの嬉しさで一杯になった。妙な隔たりのない、先通りの友情が恢復したことは、二人にとってほんとに喜ばしいことであった。
「実は僕も気が気でないようだったよ」
と云ったとき、今の安
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