心でのびのびとした心から、涙が滲み出るのを浩は感じさえしたほどであった。
二人の立ち話しは以前にも増してしばしばになり、また互のためになった。二人の住むまるで異った生活から得たいろいろの話材が、各自を益し合ったのである。
一度心が善を求めて来出すと、庸之助はこの日常の自分の生活が堪らなく呪わしくなって来た。到るところに醜いものがある。卑劣な感情がある。互に悪い深みへ深みへと誘い合って落ちて行こうとするような周囲の状態を見ると、庸之助は浩が羨しくなった。下等な争論や憎しみのない世界へ住みたい。この世間は穢れているという、彼の意見がまた心を占領し、あくまで奮闘して社会の改良者となるべき未来を想像したのであった。
お咲は国へ帰ると、もうすっかり気がのびのびとなった。境遇の変化が非常に彼女の心を慰めて、毎日毎日思い出の中に、体ごととけこんだような日ばかりが続いたのである。
子供時代の思い出――貧しい、父親のこわいなかで、矢のように早く通り過ぎてしまいはしたものの、さすがに今回想すれば、自然と涙の出るような追憶が、眺める一本の樹木、一条の小川からも湧き返って来るのである。
垣根の「う
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