の時分とは全体がまるでちがって来ているもの」
「でも……ひろ子さんは、そういうときでもちゃんと成長して行けるけれど、あたいはやっぱり普通の女で、そうやっていたっていつまでたっても普通の女としてのこるばっかしだから……」
乙女は、唇をなめなめ云うのであったが、きいていて、ひろ子は自分の顔つきがぼんやりとしたおどろきから、次第につよい疑問へとかわって行くのを感じた。
眼を見開いたままのような表情で乙女が云い終ると、ひろ子は上気しているその乙女の顔から思わず視線をそらして低く、
「普通の女って……なんだろう……」
苦しげに呟いた。乙女の云ったことみんなの、はじめの方は、これまで知っている乙女の心から云えることであった。だが、あたいはやっぱり普通の女で、という、そういう云いまわしや自分の身を友達たちの生きている生活の波から区別してのもののみかたは、勉のものではもとよりなかったし、乙女が良人をなくしてから今日までの二年の間に、自分の生きて来た道から見出して来たものとも思われなかった。これは、乙女らしくない云いかたである。お前は、或は君は、普通の女なんだから云々と乙女に向って説得的に云ってい
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