ないのよ。仕方がないから、せいぜい理窟をこねてね、お母様が買えない議論というもので親孝行でもするしかない」
保の生活は無垢ななりに、離れて暮している姉の、単純でひとり立ちの生きかたとは、ずっとかけはなれた環境におかれている。そういう具体的な点を一つ一つたしかめて来て、保の部屋の入口の鴨居にはられているメディテーションという字を思い出すと、伸子は辛かった。自動車でドライヴして、そんな大温室を見られる条件はある。けれども、メディテーションと貼紙している保の若いおさない心に、どんな葛藤がかくされているか、それをその生活の中にあって、見守ってくれるような大人の精神、本当の思いやりというものは、保の生活のまわりにはない。
この間動坂へ泊った朝、おそい朝飯に多計代と二人きりだったとき、伸子は保の貼紙のことを話した。多計代は、保がそんなに純真で、真面目なのだから、間違いないということばかりを強調して、伸子の不安にとり合わなかった。私に保のこころもちは、本当によくわかっているんだから、といった。
「そうかしら……」
伸子は、暗い眼をした。保は前の晩に、なんと云ったろう。
「お母様、なぜだろうね、
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