越智さんが来るときっと洗面所へ行って白粉をつける」小さい子のように姉にそういいながらも、母には「お母様、なぜ」と、そのことについてじかにはきかない二十歳の保の青春には、母にわかっていない複雑さがある。多計代は、どうしてこんなに簡単に、保のことは隅から隅まで自分にわかっていると思いこんでいられるのだろう。
しかし、保のなかには伸子の生れつきとはちがったものがあって、姉と弟という以上に、保は伸子から自分をへだてているところもある。
思ったより早くかえって来た姉弟を見て、
「どうした」
素子が意外そうに出て来た。
「留守だった?」
「いいえ。温室は見たのよ、ね保さん。でもうちの方へはよらないで来たから」
出がけにこだわった気分をかえて、素子は二人のために食卓の世話をやいた。
食後、素子がその頃流行していたダイアモンド・ゲームを出して三人で遊ぼうといった。保は、
「僕、やったことがないから……」
とことわった。
「やったことがないって」
眼を見はるような表情で、素子は、
「こんなもの!」
そこへ、赤、黄、青と小さくコロコロしたコマをあけた。
「子供のやる遊びですよ。出来ないなんて
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