かくとは云いながら自分の生活に遠い感情で眺めた。
 くちかずの少い、ふっくりした蕗子の心が、若い自分たち仲間の就職ということについても、いろいろ心を働かして考えている。はたちを越したばかりのそういう蕗子に、伸子はなつかしみをもって歩みよってゆく自分を感じた。素子が結論づけるように云うのだった。
「まあ、今のうちせいぜい勉強して、新しいロシアの小説でも読んでおく方がいいでしょう。どうせ、あすこのことだから、古くさいものばっかり読まされて来たんだろうから」
「じゃあね」
とうなずきあうようにして、蕗子とその友達とは帰って行った。
 八畳の縁側の柱の下へ座蒲団をもち出して、竹村が、ひとりでたばこをふかしていた。
「や、どうも……」
 素子が、そういいながら、紫檀の角机へ縞銘仙の袷のひじをついた。
「……この頃の若い女は、変って来たねえ」
 素子が、ロシア文科にいたとき、その大学で上級生だった竹村は素子と男の友人同士の口をきいた。
「とにかく、経済的に独立して働かなけりゃならない、と思うようになって来ているんだから、大した進歩だ」
 婦人の経済的独立の必要ということは、どの婦人雑誌でも扱う問題
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