ロシア語を習いに来ることになったとき、素子は、どうせ教えるのだから、と伸子にも勉強をすすめたのであったが、伸子が教科書を一緒に買ってもらった気持には、ロシアにひかれるものがあったのだった。
 稽古がすんだ部屋へ伸子がお茶をもって行くと、素子がいつもの赤く透きとおるパイプをくわえながら、
「なるほどね、そういえば本当にそうだ」
 面白そうに笑った。
「なんなの?」
「浅原さんがね、ワーリャさんの眼は、ほかの外国人の眼とちがって、じっと見ていても変になって来ない、っていうのさ」
「変になって来るって……」
 伸子はよく意味がのみこめなくて、
「どういう風に?」
ときいた。蕗子は、ふっくりした小さい口元でなかば笑いながら、
「あんまり碧い眼を見ているうちに、段々その人が何を考えているのか分らないようになるでしょう? 溶けるみたいになって。でも、この間はじめてお目にかかったワーリャさんの眼は私たちの目とあまりちがわないみたいで、わけがわかったから」
「本当に! そういえば、ミス・ドリスだって、眼だけ見つめていたら、何がなんだかわからなくなって来るわ」
 ミス・ドリスは蕗子のいる専門学校の英語の
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