の主張を感じた。
 いよいよ荷物を運び出す日になった。日本橋の素子の従弟のところから、若いものを四人よこしてくれた。働きなれた人々の手で家じゅうは思ったよりずっと簡単に空っぽになった。そして、最後のトラックが駒沢の家の門から出て行った。手伝いの男たちもそれに同乗してゆき、ふとん類もつみ出した伸子たちは、すっかり建具のとりはらわれてがらんとした縁側で番茶をのんだ。とよ[#「とよ」に傍点]はそのまま駒沢の奥の実家へ帰り、伸子たちは、今晩、老松町の裁縫屋の増田のところへ泊ることになっていた。素子が京都へ立つまでの数日の宿として、そこがきめてあった。いまは空屋となった家のなかから丁寧に雨戸をしめて戸締りし、風呂場のくぐりから外へ出た。そこへも、えび錠をかけるとよ[#「とよ」に傍点]の手もとを見まもりながら、伸子はいよいよこうして日本を離れようとしている自分を痛感した。伸子を、日本にひきとどめるようなものはなに一つない。この家の生活にしろ、どこでの生活にしろ。――しかし、そこを離れるための準備ばかりがされているいま、そのあわただしさと全く事務的ないそがしさをとおして、これまでの生活のすべてがそこ
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