「お母様の世間だけが、世間のすべてでもなさそうよ」
と云った。
「お金のことでいうんなら、吉見さんのうちの方がよっぽどお金持かもしれないわ、吉見さんは自分のお金で行けるんだから」
「なにもお金のことばかりいってやしませんよ」
多計代は、自分の息子や娘の友人にたいしていつも警戒的で、下目に見る習慣があった。さもなければ、保の友人の東大路の場合のように、何かの偶然で有名なその家族の名前に盲信した。だから、和一郎の友人にしろ、保の友達にしろ、その年頃の若い者らしく溌剌と自由で、まともなつき合は佐々の家庭のなかまでひろがらず、例外のように出入りしつづける若者は、多計代のそういう態度に反撥しないような人柄だった。そういうことに潜んでいる和一郎や保にとっての人生的な危険を、多計代は全く気づこうとしないのであった。佃がどういう性格であったにしろ、多計代からこうむった侮辱は度をこした。そのことのために、伸子は佃を気の毒に思わずにいられなくて、自分が妻として佃にたいして抱く苦しさの解決さえもかえってのばしのばしした。
「お母様、ほんとにいつになったら、自分の娘を一人前と思えるのかしら……友達を信じない
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