ってことは、娘を信じないことなのに――」
多計代が、いいつのろうとする機先を制して泰造が、
「いいじゃないか、多計代。よろこんでやって、いいじゃないか」
といった。
「あんな小さい赤ん坊だった伸子が、こうやって一人で外国へまで行くようになったんだ」
多計代は、その言葉で感傷を動かされ、しばらく黙った。
「それゃ、わたしだって、よろこんでいるんですよ。それにしてもね」
「吉見、だろう。そう拘泥するもんじゃありません。お前だって伸子一人遠くへやるより、ああやって一緒のひとがいる方が、どんなに安心だかしれないじゃないか」
「…………」
多計代の釈然としない理由は、伸子によくわかった。多計代の心には、この旅行についても素子が伸子をどこかで利用しているにちがいない、と思いこんでいるのだ。
伸子のために、便宜があればそれにこしたことはないが、吉見素子がそれにあやかることは不本意だが、大目にみておくという表情を、ありありと顔にうかべている多計代に玄関まで送られて、翌日伸子は父と藤堂駿平の邸へ出かけた。
麻布の天文台のそばで門の石塀のそこまで葉を落した桜の枝がさし出ている。三人の取りつぎが
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