きに便利な友人をもっているようにも思えない。考えまどっていて、伸子は、ふっと一つのことを思いあたった。
「ね、カラハンが来たときね、日本側の代表でいろいろやったの、藤堂駿平だった?」
「そうさ」
「――それだったら、もしかしたら何とかなるかもしれない」
 十年も昔、伸子の小説がはじめて雑誌にのせられたとき、それを読んでといって、少女だった伸子に一匹の反物をおくってくれた老婦人があった。同じ錦紗でも手にとってみるとしっとり重い上質で、大まかに麻の葉の紋柄が浮き出ていた。その布地は、ひどく伸子の気に入り、さっぱりした薄紫にそめて着た。あとで、それを黒にして、いまもその羽織は愛用している。その反物をくれたのは、藤堂駿平の母で、七十になっていても、本をよむのを日課にしているという老夫人だった。伸子は、その御礼のことで多計代といいあらそったのを覚えている。多計代は折角もらったものだから、着物にして着てよく似合うところを見せに行くべきだといい、伸子は、そんなことはいやだ、とあらそった。
「お母様、もしこの反物を、ほかのどっかのおばあさんがくれたとしても、やっぱりそうおっしゃる? 藤堂駿平が男爵でな
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