ゃ信用しないという意味らしい」
「素姓って……」
「なにものか、と思うらしいのさ」
伸子は、ありえないという表情で、
「おかしいじゃないの、ちゃんとわかっているじゃないの」
と云った。
「あなたは翻訳家だし、わたしは作家だし……どっちもきのう開業したわけでもないのに……」
素子は、赤いすきとおるパイプを口の中でころがしながら、考え深い眼つきでしばらく黙っていたが、少し声を低くして、
「政治的な意味があるんだね」
と云った。
「案外、諒解が必要だ、というようなことなのかもしれない」
ソヴェト革命記念祭のお客に、日本から国賓が招待されたとき、その人選や連絡のために斡旋した文化連絡員がいる。素子はその外国人の名をいった。
「それゃ民間の女でゆくのは、私たちがはじめてなんだから、一応面倒なのもわかるけどね」
きいている伸子は、次第におこった顔つきになって行った。
「わたしたちが、もしいわゆる無産派でないからっていうなら、それこそ馬鹿らしいことだと思うわ。そういう立場でさえあれば、すべて素姓がたしかだとでもいうの?」
「しかしね、ぶこちゃん」
いつもに似合わず、素子の方が沈着に、亢奮し
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