きまわしている。そのおはちの、こちらに見えている内部はからっぽで、一粒の米もなかった。
「ハハハハハハ」
木下はひどく愉快そうに、大笑いをした。
「これはいい。いいじゃないですか」
「そうよ。わたしも気に入っているんだけれど」
伸子は、自然に飛躍した。
「こまることもあるわ。この絵を見せて、わたしはこういう運勢のものですから、よろしくって云ったって、外国旅行はさせてくれないから」
「――そんな話が出ているんですか」
二人にソヴェト旅行の計画がきまったこと。素子は自分で支弁するが、伸子には旅費がなくて、からの旅券下附願を出してあることを話した。
「なんとかならないかな」
「わたしに、小説でない、いろんなものをかけるなら、もちろん、木下さんのところへ相談に行ったんです。無理にだっておたのみしただろうけれども、わたしは、それが駄目だから……言葉も通じないところへ行くんだし……」
どこへ行っても小説以外のものはかけないだろうということを、伸子は、自分の生活上の無力さとして感じているのであった。しかも旅行している何年かの間は、その小説さえたいしてかけまい。そう予感してもいるのであった。
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