れば、そこの生活の実際がわかるだろうし、それにつれて自分というものやその生きかたもわかって来るだろうと期待するのであった。
「うまく説明出来ないけれど……わかる? 自分を砥石《といし》にかけてみたいの。だから、わたしロシア語なんか知らなくたっていいわ。そこで生きてみるんだもの……」
「それゃ、ぶこちゃんらしい」
 素子は、しばらく黙って考えていたが、
「どだい、君とわたしとは同じ行くにしろ目標はちがうんだからね」
 その点を、改めて自分たちにも明瞭にするというように素子はゆっくり云った。
「しかし、そうきまったらきまったで、早速動き出さなくちゃ」
「そうだわ、旅費もないんだもの……」
 実際的なテムポで云い出す素子にそう答えながら、伸子は、
「ああ、あ」
 長い溜息をついて、卓の上にさしかわした自分の腕へ頬をのせた。
「なんて、ひと仕事だったんでしょう」
「何が?――きまるまで?」
「だって、わたしたち、惰性だけで動くの本当にいやだったんだもの……あなたの方だけ、どんどんはかどって、わたしがそれでもまだわからなかったら、どうしようと思っていたんだもの」
「…………」
 素子は、再びその
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