…動機がまだ熟さないんだそうだ」
「だって――それはウメ子さんは、わかって下さると思うわ。あいまいで、行くようになってしまったりするの、惜しいんですもの。度々行けるところでもないんだもの」
 動機ということを云えば、名も告げない白い浴衣のひとが来て云ったことで、伸子は、自分のわからなさの凝集作用ばかり見つめていたような状態から、つきとばされて、そとへころげ出たようなところがあった。わからなさのそとに、わかるべきことが存在していて、むしろ、そっちに意味がありそうに思えるようになって来ているのであった。
 ウメ子は、その晩伸子たちの住んでいる郊外の家へ泊った。翌日のひる前、帰ろうとするウメ子に、素子が実際家らしい調子で念をおした。
「旅行の話ね、あれはまあいまのところ全く確定していないんですから、そのつもりで、たのみますね。いい恥っかきだからね、じたばたしてあげくの果に行けなかったなんてのは――」
「ええ。大丈夫です。誰にも云いませんから……」
 玄関へ出ながら、ウメ子は濃い長い眉をあげるようにして、
「しかし、本当に実現なさるといいですね」
 伸子をかえりみて、云った。

 うすい灰色の
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