頃ちょいちょい訪ねて来た。沼辺耕三は、玄関をあけて入らず、柘榴の下枝をくぐって、いつもいきなり座敷の縁側のところへ姿をあらわした。はじめて来たときから、彼はそうした。
 伸子は、そのとき座敷にいたこともあり、いなかったこともある。不機嫌になって座敷の真中の卓の、床の間よりの側に坐る伸子に、白服をきた沼辺耕三ははなれた縁側から、話しかけた。
「きょうは吉見さんは――お留守ですか?」
 そして、奥をのぞくようにした。伸子のこころに、留守ならばどうだというのだろう、と思わせるいいかたできいた。いくら伸子がことわっても、何か書けと求めた。そのおしのつよさは、伸子に自然なものとしてうけとれず、俗に男はおし、という、そういう意味でのおしの感じに通じていて、沼辺耕三を嫌悪した。
 その男が、きょうは浴衣がけで来た、と思って、伸子はいそいで縁側から立って奥へ入ろうとした。すると、庭へ入りかけていた白い浴衣の人は、伸子のおどろいたのがわかったと見え、
「や、失敬しました」
といった。
「――玄関へまわった方がいいですか」
 眼を定めてみれば、それは、沼辺耕三とはまるで別の人であった。ただ、三十をすこし出
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