老松町を引こしてからの自分の生活を話した。久地浩のところへ出入りし、書いたものを見て貰い、大変嘱望された。またこの一年ばかりは相川良之介のところへしげしげ訪ねていた。そういう話だった。絢子は、
「あのかたは、家庭でも、ほんとに孤独でいらしたわ、わたしにはよくわかっていましたの」
 そういって、わかる訳があったのだ、という眼つきで伸子を見た。伸子は、ばつのわるい表情をした。黙っていると、
「あの新聞に出ました『ある旧友への手紙』もちろんおよみになりましたわねえ」
といった。
「ええ」
 絢子は、犬歯のめにたつ口もとを引しめてうつむいていたが、その頭をもたげるなり、
「あすこに、女人とありましたでしょう。あれは、実は、私のことなんですの」
「…………」
 おこった視線で、絢子はその言葉を信じかねて黙っている伸子を見つめた。
「あなたも、私のいうことをお疑いになるんですのね」
 伸子は、
「ごめんなさい」
といった。
「でも――わたしは、あなたに二年も三年も会わなかったでしょう。そして、相川さんという人だってなにも直接の交友はなかったんですもの――信じる根拠も、信じない根拠も、わたしとしては
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