と判るかどうかも疑わないわけにはゆかないだろう。」こういうところは、伸子に字づらでしかわからなかった。伸子は、封建時代という意味をぼんやり「昔」としか理解していなかった。従って、相川良之介のいっている意味はよくのみこめず、その十分のみこめない文章の中で伸子によくわかるひとつのことは、自分によくわからないことについては書かないものだ、と語っている相川良之介の態度であった。この暗示に従えば、伸子として相川良之介についての感想などを書くのは礼儀でもないし、自分に忠実でもない、ということになった。しかし、伸子とすれば、自分にまでそういう暗示をなげる相川良之介の聰明そのものに非肯定を感じるのであった。
伸子が机の前で考えにしずんでいるところへ、とよが、
「お客さまですが……」
と来て立った。
「どなた?」
「遠藤絢子さんという方です……老松町のころにもよく上ったとおっしゃっていますけれど……」
遠藤さん――伸子は思い出した。老松町の家に住んでいた頃、近所の筑前琵琶師の二階がりをして、賃仕事などをしながら、文学をやりたいといっていた絢子という二十四五のひとがあった。
「ぜひお話ししたいことがあ
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