代のそういう云いかたをきいていると、伸子は、ますます母のこころが、越智とのいきさつ以来、このごろになってからまた一つの転機をへたのを感じた。多計代は素朴に撞着した熱情のまま、その熱情の限りで、ひよわい越智をおして行った。その結果は、丁度ひとが、自分のからだの全重量をかけて廻転扉をつよくおしすぎて、外へ出るよりもはやすぎるスピードでドアがまわってしまい、また逆にもとのところへ戻ったような工合だった。多計代は自分の心の力にまけて、自分の心のこまかい組立てをしんみりと吟味するゆとりもなく、男のひよわさの裏ばかりをひとまわりしてしまった。そして、女の自己肯定にこりかたまったように見える。
 伸子は一種の恐慌の感じでこの新しい事実をうけとった。多計代のうちに燃えゆれていた最後のみずみずしさ、柔軟さは徒労のうちに燃えつきた。そこには灰色にかたまったおき[#「おき」に傍点]がのこされた。もう二度とそれに火はつかないだろう。そして多計代が人生のいろいろな面、とくに男女のいきさつについてもっている偏見は、矛盾したまま冷えかたまって、多計代の生活にあるあらゆる自己撞着はこれからさきはひとしお威厳の加わった
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