こから光線がさしこんでいる。けれども、四方の壁が柱と同じようにやっぱり真黒い塗料でぬりこめられているから、その明るさなどは吸収されて、机のところに、単調で鈍い庇合《ひあわ》いの明るみが落ちているばかりであった。たしかに、その半地下室の空気は、ひやりとした。でも――なぜさ。伸子は、黒く光る柱の下にたたずんで、ほんとに声に出してそうひとりごとした。なぜさ! 涼しい、といったって、夏のさかんな季節のおもしろさ、その自然の美しさや光線の横溢を、こういう半地下室のひやりとした朦朧《もうろう》さととりかえている保のこころもちを、伸子は解せなかった。つよく、わからない、と思おうとしている伸子の感情はいわば強いてもそのわからなさに踏み止まっている、というところがあった。相川良之介の死。「ある旧友への手紙」。その感銘ぶかい葬儀からかえったばかりの伸子の神経には、保の土蔵への引こしを、ただ偶然のことと思えないような過敏さがあった。土蔵好きになった、という保の心持そのものに不吉感を感じるのであった。
 伸子は、言葉にいえないその不吉感を、自分に認めることさえ恐れた。そういう風に感じたりすることは、わるい文学
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