切られた頁の上にその文章をよんだとき、そこに相川良之介らしい文学的[#「文学的」に傍点]悽惨ばかりをつよく感じたのは、伸子の理解が浅薄なためばかりだったろうか。
いまになってみれば、それは「ある旧友への手紙」の中にいわれているとおり三年がかりの死への準備行動の一記録であった。よだれをながしながらも、正気を失わず、一歩一歩と死に入って行っている人間の文章が、どうしてもっときのままの恐怖でよむものをうたなかったろう。すべてが、こんなにあるままにかかれていて、それだのに、相川良之介は、どうしても文学的[#「文学的」に傍点]姿態からぬけられなかった。
率直に、漠然とした本質をそのまま「ただボンヤリした不安」と告白されているとりとめない不安を相川良之介が自分の将来にたいして感じはじめたとすれば、それは、彼の聰明さが、才能的な聰明の限界というものを直感しはじめたからではなかったのだろうか。そう考えつめれば伸子にもわかるところがあった。
けれども、やはりわかりきらなかった。彼のような博識と聰明とが、なぜ自覚されはじめた限界感の内側にとどまっていなければならなかったか。そこのところがわからなかっ
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