子はおどろきのやまない気分だった。素子の性格のなかには、伸子とまるでちがったあらわれかたをする実行性があった。それがこれまでの二人の生活の急所でバネを押す力となって、移って来ている。そもそも二人が、一つの家に暮すようなきっかけとなったのも、どちらかといえば素子のそういう実行性の刺戟であったし、こんどのことにしろ、日頃はこまごまと煩瑣な素子に、予想されないような決断が働いている。
「――あなたは、なかなかえらいところがあるひとなのね」
伸子は、わきで白い団扇をつかっている素子にいった。
「どうしてさ」
「だって……生活の舞台を大きくまわすことを知っているんだもの」
こういうときには、かえって受動的な自分を伸子は感じた。そして、きいてみたかった。ほんとに素子は、向上心だけで、外国へ行こうと決心しているのかと。素子だけが外国へ行く、ということが伸子には、切迫した実感としてうけとりきれなかった。ひとり日本にのこる自分の生活の変化ということの実体もよくわからなかった。伸子は冷静なような、また、非常に動揺しているような気持で、夜の庭の夏草が室内から溢れる皎々《こうこう》とした電燈に照し出されて
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