、不自然にくっきりと粉っぽいように見えているのを眺めた。
十九
東京の夏は、いつも七月二十日前後からひとしお暑気を加えて来る。その夏は近年にない酷暑ということで、新聞の写真版もあらそって涼味をもとめていた。
外国行の話をしてから、素子はその暑気の中を精力的に動いた。そして、二三日うちに京都へ出発するところまで用事を運んだ。
「やれ、やれ、これであした日本橋へ行けばもうすっかりすんだ!」
日中は乾くまでが暑くるしいと、夜あらったどっさりの髪を肩にひろげて、素子はうまそうに煙草をすった。日傘をささない素子の顔は日にやけて、湯上りの鼻のみねが、うす光りした。
あくる朝、伸子はいつものとおり、素子よりひとあしおくれて起床した。そして、蚊帳をたたみ、床をあげてから、茶の間のそとの縁側を通って風呂場へゆこうとした。すると、
「ぶこちゃん」
妙にしんとした声で、素子がちゃぶ台の前からよんだ。
「いま、すぐ」
そのまま髪を結いに行こうとする伸子に向って、素子はなお息をひそめたような声で、
「ちょいと来てごらん」
手にもっている新聞で招くようにした。
「――なにかあるの
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