とで、伸子はあとまでどんなにせつない思いをしたことだったろう。佃も、うけないでいい侮辱をこうむった。自分がしたいとおりに生活するのなら経済上のことも自分でやるがいい。そういって、多計代は、佃と伸子とを動坂の家から出した。それ以来、伸子は現在のようにして暮して来た。
「話せば、出してくれるかもしれないけれど、わたしはいやだわ」
「それゃ、そうだね」
素子は肯定した。が、じゃあ、ぶこちゃんの方はどうしよう、といわない。伸子は、ロシアへ行くというようなことについて、ちっとも考えを組立てていなかった。だから、いま急に素子が行くといっても、実感はそこになくて、どうせ行くならフランスも見たい、と漠然とした計画を感じるだけであった。けれども、二人のこの数年来の生活で、素子が、この話を、自分が行く計画としてだけ話しだしたことは、伸子を別の角度から複雑な心もちにするのであった。
「行けばどの位行くの?」
「さあ……」
素子は、しばらく躊躇していたが、
「どうしたって二年だろう?――その位いなくちゃものになるまい?」
そういいながら、素子はちょっと苦しそうな眼をし、うすく顔をあからめた。伸子は諒解し
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