いい出したのだろう。いつもは、伸子が煩しいと感じるぐらい、思いついた計画の第一歩から話す素子だのに。――急にわいて来る様々な疑問を、とりあえず一番簡単な問いにまとめたように、伸子はきいた。
「――お金、あるの?」
素子は、そうきく伸子の腑におちかねながら緊張している顔を見やり、
「なんとかなるだろう」
その点も、十分考えてある、という風に答えた。
「帰ってみた上でなくちゃたしかなことはわからないけれど、だいたいなんとかなるだろう――私の分を、この際いちどきに貰っちゃうのさ」
関西にいる父親から、素子の分として予定されている財産を、まとめて貰って、それでロシアへ行って来ようというのであった。伸子は、財産のことについてそういう計画的な方法をとっているのが素子親子であることに、珍しい感じを動かされながら、当惑したように、
「わたしは駄目だわ、とても動坂なんかから、お金出してもらえない」
といった。
七八年前、伸子は父につれられてニューヨークへゆき、そこで一年あまり暮した。そして、佃と結婚して、帰って来た。その間の費用は、佐々の親から出してもらった。そうして費用を出してもらったというこ
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