、と思った。そして、憎悪を感じた。「断然処分する!」あすこに男の子がいるとしてもきっとまだ小さいんだろう。末っ子かもしれない。伸子は、新聞をたたみながらそう思った。
素子の翻訳した書簡集は、やがてある文芸書を専門にしている出版社から出ることにきまった。
「よかったわ――おめでとう」
素子は、うれしそうに上気しながら、つみのないまけおしみで、
「出すの、あたりまえさ」
といった。
「本当にいいものなんだもの。――もし出さなけりゃ、むこうがばかなのさ」
「それゃそうだけれど……」
伸子とすれば、間もなく、自分がこの二三年かかって書いた長い小説がまとまりかかっている。そのとき、素子の仕事も、はじめての業績として出版されることになったのを、うれしく思うのであった。
「――ひとつ献辞をかかなくちゃ、わるいかな」
「結構よ」
「外国の作家はよくやってるじゃないか」
「だって……」
伸子は、首をすくめた。
「わたしも、じゃ書くの? 献ぐって?」
二人は笑った。素子は、赤いパイプを口の中でころがすようにして目を細め、ポプラの枝の間に白く光っているとなりの洗濯ものを見ていたが、ふと椅子ごと伸
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