もっていた。
夏の宵闇に涼みながら、ソヴェトへの国賓のとりざたをきいていると、伸子は、ロシアという国に錯綜している古さ新しさについて、またそれをとりかこむ国々の人の好意のなかにさえある古さと新しさ、利害のまじりあいについて、複雑な心持がした。ロシアが、ソヴェト・ロシアと呼ばれるようになり、ペテルブルグがレーニングラードと名づけられてからのロシアについて、伸子は、一般の人々が知っている以上のなにも知っているといえなかった。ただ、トルストイによってあのように描かれたロシアの生活、チェホフの語ったあのロシアの感情、そしてチャイコフスキーの悲愴交響曲や胡桃割の舞踊曲がその諧調で世界のこころに刻みつけたあの胸せまるロシアが、新しいロシアになったということについては、深い深いおどろきと魅力とがあった。そのロシアへの国賓ということには、それに向って人々を注目させ、嫉妬させる刺戟がこもっている。せり合って、幾人かの国賓の中に加わろうとする心に、まじりけない憧れ、好学心しかないといえば、その無垢さはかえっておとぎ話めいた。日本における新しい国の代表とされている古い人――事実その東洋学者は若くなかったし
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