、歴史的に新しい人でもないらしかった――おくれた日本という国の新しさを代表して国賓になろうとする人々のうちにある陳腐さ。あらゆる場合どこにでもあった陳腐さや浅薄をとおして、しかもなおそこに実現されようとしていることは、世界の歴史にこれまでなかった一つの光景なのだ。観光は、言葉そのものの意義を変化させようとしている。
素子と伸子とが、そろそろ帰らなければ、といい出す時分になって、俄雨がふり出した。
「この分ならじき上るでしょう」
そういって、素子はちょいちょい雨の音に耳を傾けていたが、だんだん風が加わって来て、しめた二階のガラス戸に、折々ザーとふきつけられて雨脚が流れるようになった。
「おとまりになっていらっしゃいましよ」
細君がしきりにすすめた。
「お二人ぐらい、夏ですもの――ああ蚊帳もございますことよ」
どうしようかと躊躇しているうちに、いきなり、天の一方で皮のゆるんだ大太鼓をたたいたような雷鳴がした。伸子は、口の尖ったような表情になって、いそいで電燈の下から壁ぎわの方にいざった。
「おきらい?」
白粉のある顔をむけて、ちっともこわくなさそうに笑いながら妹のひとがきいた。
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