指の間にはさみながら、その場に錯綜した神経にも格別煩わされもしていない風で葡萄酒をすすった。
 二階へ戻って、小川と素子は縁側の籐椅子へ出た。
「ここがヴェランダになっているといいんですがどうも……」
 小川豊助は、
「ハルビンあたりでさえ夏の別荘《ダーチャ》気分はいいですなア、夜、ヴェランダで涼みながらサモワールをかこんでいると、ギターがきこえて来たりして……」
 追懐につれて俄かに思いおこしたらしく、
「そういえば、いよいよ日本からの国賓もきまったようですね」
といった。
「へえ」
 素子は、
「そうですか? いつ?――ちっとも知らなかった!」
 刺戟をうけた表情になってききかえした。
「そろそろ旅券も下りるらしいようですよ」
 ソヴェト・ロシアが革命十年の記念祭に、世界各国から文化代表を招待して、一ヵ月間国賓として見学させるという計画が、春ごろから噂にのぼっていたところであった。
「誰です?――国賓は……」
 国賓というとき、素子は、皮肉なゆっくりした口調になった。
「大体、噂にのぼっていた人々らしいですよ」
「あ、佐内満、秋山宇一、瀬川誠夫、そんなところですか」
「それに尾田君
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