劣だろう。
 多計代が、その途方もない真率さで、越智にいわせれば、おそらく粗野で、機略も年甲斐もない若さでひた迫りに越智に迫ったことを、伸子はよかったと思った。そこに、多計代の女としての威厳が感じられた。自分の生存の全重量をかけてみて、越智がそれをもちこたえられる男でなかったことが確かめられたことはよかった。けれども、母が、情熱が凝って焔となったようなつめよりかたで、ああおせば越智にこうはずされ、ここをおせばああとにげられ、ついに全く幻滅していったこころの過程を思いやると、伸子はからだがふるえた。自分のこの手のひらの下に容赦なく鳴る越智の顔がほしかった。そういう切迫した場合でも、瀑布のように自分の上におちかかる多計代の情熱を、支え切れず圧倒される人物の悲鳴でこたえる越智ではない。いつもの、あのよせ木細工の衒学と論議で、負けたと示さずに多計代を退かせたにちがいない。おそらく多計代の自尊心がそれ以上耐えられないように、身をかわしながら、……。だからいうのに。――胸いっぱいに渋く湧く涙をとおして、この七つの言葉が伸子の心じゅうに鳴った。
 多計代はもうそれきり何もいわず、鏡台にレースの鏡かけ
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