をおろしている。ふっさりと大きい庇の前髪の下に、多計代の顔は堂々と沈静されていて、そのかげに無限の軽蔑がふんまえられているのが感じられた。
その午後、多計代は珍しく戸棚の前に坐って、息子たちの下着類をよりわけたり、雑巾に縫う布を見つけたりした。伸子はそのわきにくっついて見物していた。そういう家政のことをしている多計代の表情には、何ヵ月かの間、彼女にとって目に入って来なかった家の内の些細なことごとが、いま、はっきり見えて来ている、という風があった。丁寧に、真面目に、いつもより言葉すくなくシャツを畳んだり、布地をわきへどけたりしている。その母の様子には、伸子の心をうつものがあった。越智にたいして、苦しく燃えあがっていた多計代の憧れの焔は、おそらくは多計代として女の若さが自覚される最後の情熱のはためきであった。その不安な激しい生命のゆらぎは、越智の人間の小ささと、感情の冷やかさで哀れにうちくだかれた。けれども、こうして、堂々と軽蔑の上に落ちついた母を見ていると、伸子はやっぱり悲しかった。多計代のあんなに激しい、本気だった女としての動揺も、土台のところでは、決して全生活がそこにかけられている
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