像していない客間の光景であった。あけ放された出窓から、飾られている大理石の彫刻のわきまで枝をさし入れそうにしげっている楓の若葉照りをうしろにして、小枝の血色と純白のブルーズとは生気にみちて美しい。小枝が生気にみちた少女であるだけ若い人々の間には自然の雰囲気がかもされていて、ふいと、その中に入ってしまった伸子は場ちがいな姉として自分を感じた。
「冬ちゃんどうしているかしら……」
泰造の妹に当る母が亡くなってから、小枝の姉になる冬子が母がわりとなって家の主婦役をしていた。おなじ従妹でも伸子は年の近い冬子の方によけい親しくて、佃との紛糾に耐えがたくなった頃、冬子が療養生活をしていた鎌倉の家のそばに、二間ばかりの家を見つけて貰ってしばらく暮したりしたこともあった。小枝は行儀よく、
「あいかわらず」
と答え、思いがけず伸子に会ったのをきまりわるそうに、和一郎に視線を向けた。和一郎や松浦がいつ学校へ行くのか見当のつかないような通いかたをしているのは、学校が美術学校というところもあって、普通のことのようになっていた。
和一郎は、ごく自然なとりなしで、やがてシューベルトの歌《リード》を弾き出した。
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