どういい現わしていいかわからないいやな後味があった。
 そういう伸子の状態を、素子は、神経にこたえた結果と解釈して、気まぎらしに動坂へでも行ってくればいいとすすめるのであった。
 月曜になってから、伸子は、八重洲町にある泰造の事務所へ電話して、昼すこし前に出かけて行った。イギリス風の料理ずきな連中が援助してその頃開業した小じんまりした店があった。そこでお昼をたべよう、ということであった。
 行ってみると、泰造はまだ机からはなれられないで、伸子は事務所に通された。いろいろな大理石の見本だの蝶番《ちょうつがい》だのの見本がつみ重ねてあるわきに、高いファイル棚があり、泰造はテーブルの上に青写真をひろげて調べていた。その日はモーニングを着ていて、眼鏡のはしのところを左手の指でつまむような手つきをして青写真をのぞきこんでいる。わきに白っぽいブルーズを着た若いひとが両ひじをテーブルについて、何か説明していた。伸子が入ってゆくと、ブルーズのひとは、姿勢を改めて丁寧に礼をした。だが伸子の方はその人の名も知らなかった。入口の広いところで、昼食に立ってゆく何人かの人にすれちがったときも、その人たちはほとん
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