がいやであった。
十五
「ぶこちゃん……動坂へ行く約束してあるんだろう」
「約束ってほどでもないけれど……」
日曜日の朝、素子がいいだした。
「行っといでよ」
「ええ……でも、行ったって……」
「ピアノでも弾いて来た方がいいんだ」
素子がそういうには理由もあった。土曜日のロシア語の稽古に浅原蕗子が来たとき、素子は最近のニュースという工合にして、前日来た三人のぼうぼう頭の青年たちの話をした。すると蕗子が、いつも変らないふっくりとして沈着な表情で、
「どちらがお会いになりましたの?」
と、二人を見くらべた。
「それゃ、もちろんぶこちゃんですよ。私なんぞは無名の士じゃありませんか」
「お金おやりになりました?」
「やるいわれなんかあるもんか! さすがのぶこちゃんも堂々とことわりましたよ」
蕗子は、口元をほころばして伸子を見た。伸子はその蕗子の顔をじっと見かえしていたが、
「お金をやったとか、やらなかったとかいうだけで結着してやしないでしょう?」
視線を蕗子の上にすえた。
「それゃそうさ」
「まして、ぶこの武勇伝なんかじゃありゃしない」
「…………」
伸子には全く
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