ようになって来た。少くとも今伸子の前に並んでいる三つの若い顔のどれにも、苦悩の刻みめは大して刻みこまれていないように見えた。その顔々の上には、そういう風に毎日を生きている生活の習慣があらわれており、その習慣で身についたかまえがあるけれども、世間は紙くずが街頭をころがってゆくのを見るようにこの人々の生活を見ていて、うるさいときには少しの金をやって、追っぱらって来ているように思えた。そして、そういう関係もこの人々にとっては習慣のようになっているように思えるのであった。伸子はそこに社会の真の酷薄さを感じた。亢奮がしずまって、伸子は少しユーモラスに、
「どうも、あなたがたは、見当ちがいのところへいらしたようね」
といった。
「自分で書いて暮しているんだから、お金なんてないのよ。それに、わたしは、面倒くさいからくれてやれ、という風に、あなたがたを見る心持になれないんです」
 するとさっき、ゆするようにものをいった青年が、
「ふん」
と嘲弄した。
「詭弁でやがらあ」
 伸子は再び沈黙した。自分が詭弁を弄しているとは思えなかった。伸子の内心にはおどろきと疑問がひろがりはじめているのであった。こういう
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