ッキをついている青年は黙って伸子をにらんだ。すると、ズボンとはちぐはぐな上衣をシャツの上から着ている一人が、
「面倒くせえなア」
と、乱暴に髪ののびた頭を掻いてからだをゆすぶった。
「わかっているんなら、つべこべいわずに出したらいいじゃないか」
伸子は、さっと顔に血の色をのぼせた。
「あなたがた、自分たちをゆすり[#「ゆすり」に傍点]同然に扱っていいの? 乞食が来たと思えば、黙ってお金だけやるわよ。あなたがたは、それとは、違うでしょう。少くとも主義[#「主義」に傍点]というものがある以上、それについて、まともに話すということは、敬意なのよ。ゆするなら帰って下さい、ゆすられたりおどかされたりして出さなけれゃならないような金は、一銭だってわたしのところにはないんだから……」
ステッキを持っているのが、
「まアそう怒り給うな」
と、すこし笑うような口元になった。しばらくどっちからも口をきかず、互いを眺めあった。しみじみと眺めているうちに、このぼうぼう頭をしながらルバーシカを着るような趣味をもっている若い人々が、本当に何か一貫した主義をもってこうして生きているのだと伸子にはだんだん思えない
前へ
次へ
全402ページ中180ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング