で来た石の花形を思い出した。
「門の石じきの模様ね、あれ、お父様がデザインなすったの」
「そうだよ」
「花の形を、あすこへ入れることも?」
「――いいだろう? 気に入りましたか?」
柿模様の火鉢のよこに、ついの小|抽斗《ひきだし》がついている。手をのばしてそこから封筒を出しながら、泰造がいった。
「門を入ると、花がある――わるくないだろう?」
門を入って来る幾人のひとが、花をそこに散らしたこころをくむだろう。伸子は、自分までが今になってそれに気がついたとは、いいかねた。
「きょう、どうかなすったの? 珍しくお早いのね」
「ああ、腹をこわしてね、よるはことわって帰って来てしまったのさ」
「よかったわ」
心から伸子はそういった。泰造が晩飯にいあわすことは月に数えるしかなく、そのときに伸子が来合わすことはさらに稀なことであった。
「お母様は?――お出かけ?」
「客だ」
ぶっきら棒にいって、泰造は手紙を出させるためにベルをおした。
六月の夕暮のうす明りが、出窓のレース越しに、植込みの青葉に残っている。落着いた深紅色の地に唐草模様のついた壁紙がはられた室内には灯がついていて、食器棚の深
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