彫りを浮き立たせ、同時にこの食堂の意味のわからない独特な特徴である雑多な罐や箱のつみかさねを、隅の方で目立たせている。
急に廊下ごしの客室のドアがあいて多計代が出て来た。
「こんにちは」
という伸子に、
「おや」
目を向けたきりで多計代は、
「あなた」
坐っている泰造のむかい側にまわった。
「ちょっとお会いんなって下さい。さっきから申上げているのに」
泰造は返辞をしないで、新しい来信の封を鋏で切っている。その泰造の鼻の穴はふくらんでみえる。伸子は父が癇癪をおこしたことを知った。
「何でもないことじゃありませんか、ちょっと顔を出して下さるぐらい――保だって世話になっているのに……」
伸子は、眼をそらした。白いレースの夜の窓がそこにある。苦しく心がひきしぼられた。また越智が来ているのだ。――
挽茶《ひきちゃ》のような淡い緑の絽《ろ》ちりめんの単衣羽織をきた多計代は立ったまま、いらだつように、
「いつもあなたは御自分のつきあいはあんなに大事になさるくせに――紳士《ジェントルマン》というのは、そういうもんじゃないでしょう」
泰造の顔に、さっと血のけがのぼった。鋏を乱暴にテーブルの
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