の形にきられた石が、はめこまれていたのにはじめて目がとまった。五つの花弁の先はまるくコスモスの花に似た模様に石がはめこまれている。伸子は、その発見を非常にびっくりした。というのは、この石じき道ができたのは、もう数年前のことであり、伸子はそれから幾百度ここを通ったかしれないのに。――足もともそぞろに、せわしくこの家を出入りしていた自分の生活の姿が、まざまざと映しだされて、伸子は悲しく、すまなかったと思った。伸子はしばらくそこにたたずんで足もとの花をながめていた。石ではめこまれた花は石らしく素朴で、同時に、石をそういう花の形にはめているというところに人の心のおもしろさがある。伸子は、しばらく眺めていてから、いままで目にも入れずに暮して来たことをあやまる心持で、特別にそっとその花の形の石じきの上を草履でふんで奥へ歩いて行った。
 車庫の扉があいて車がはいっている。玄関にはもう灯がついている。伸子は、小走りになって重いガラス戸をあけた。これらは、みんないい前兆である。父の泰造がもう帰って来ているというしるしである。玄関の靴ぬぎ石の上に一足靴が揃えられてあった。お客様かしら、そう思いながら、どん
前へ 次へ
全402ページ中126ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング