う自分の身なりに、伸子は本能的な気に入らなさ、野暮くささを感じながら、その感じで神経質になりながら、行儀よく、若い娘のぎごちなさで、稲田の客室に通された。切下げの老母が出ての、そつのない応待に、伸子は、いいえとか、そうでございます、とか短く答えた。
 泰造への返事の手紙を書き終ると、稲田は伸子に珍しい写真画集を見せた。世界名画の中から、婦人画家の作品ばかりを集めたものであった。伸子はよろこんで、
「あら、ロザ・ボンヌール!」
「馬市」を見出して顔をかがやかした。父のもっている色刷りの名画集で、伸子は「馬市」を見て覚えていたのであった。その本には、ボンヌールのほかにマリ・バシキルツェフとかイギリスの婦人肖像画家とか伸子の知らないたくさんの婦人画家の傑作が集められていた。
「面白いですか」
「面白いわ、こんなに大勢女のひとの絵かきがいたのね」
 稲田はぴたっとした坐りかたで、煙草をふかしながら、一枚一枚と頁をくっている伸子を眺めていた。やがて、
「伸子さん、その本あげましょうか」
といった。
「ほんと?」
「あげますよ。僕にはどうせいらないもんだから……。たかが女の絵かきなんて、どうせたい
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