じめた。その新聞記事を、伸子は目をみはってよんだ。北伐軍が南京で日本の陸戦隊と衝突し、漢口でも同じようなことがおこった。間もなく蒋介石の弾圧がはじまって、上海、広東その他で革命的な指導者や大衆が多量的に虐殺された。虐殺された民衆のなかには革命的な女学生もあることを、伸子はやはり新聞でよんで知っていた。官費で勉強している師範学校の女学生たちであるきょうの中国女学生たちは、そういう激しい中国の動きにどういう関心をもっているかはわからない。けれども激動する中国の空気はこれらの若い女学生の精神を敏感にしていることだけはたしかだった。彼女たちが、孔子の話に腹立つ感情は伸子にも実感されるのだった。
散会となったとき、中国女学生たちのほとんど一人も早川閑次郎の方はかえりみず、互にしゃべりながら椅子から立ちあがり、街路を見下すその室の窓際へそのまま自分たちでかたまった。
十一
なぐさまない心持で、伸子はその新聞社の正面石段を一人で下りて来た。プラタナスの並木路をすこし歩いて、上野ゆきの電車にのった。市中へ出たついでに、動坂へよって泊ろうと思うのであった。
伸子のかけた座席はあ
前へ
次へ
全402ページ中121ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング