筆記している。伸子は、早川閑次郎らしい逆説的な冒頭だと思った。
「この優秀な孔子の道徳は、女子の生活方向というものをきわめて明瞭に示して来ています。非常に具体的に親切に教えている。男女七歳にして席を同じゅうすべからず、とか、女子と小人は養いがたしとか、そのほかまあ、いろいろ有益なことを教えています」
筆記している小柄の人は、少しけげんそうな表情でちらっと目をあげて、早川閑次郎の方を見た。腕ぐみをして、うなだれていた司会者も、顔をもたげて、話し手に注目しはじめた。
「ところが、近頃、中国の若い人々、とくに若い婦人は、この結構な孔子の道徳に対して反抗しておられるようです。盛んに男女同権を主張しておられます。ですが、どうも私の考えるところでは、反対する方が間違っているし、結局のところ女の不幸になると思うんです。女子と小人――つまり、女や、まあ一般に余りもののよくわからない人間は、皆しっかりした男にたよって安全に生かして貰ってゆくべし、それでいいというのは、女にとって実に幸福なことじゃありませんか。日本へ来てみられておわかりでしょうが、日本は今失業が多くて男は皆へこたれています。しかし、男に
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