養って貰う女は、何とかして男がやしなってくれるから、そんな男のような苦労をする必要がない。男尊女卑ということは、女の楽園、パラダイスだと思うんです。皆さんも、折角教育をうけ、教育者として活動しようとしておられるんですから、このところをよく考えて、下らない新しがりはおやめになるのが賢明であると思います」
 ほとんどあっけなく早川閑次郎の話は終った。日本語のわかるものの顔には、彼の話の真意をなんと解していいのかわからない、ばかにされたような期待はずれの感情がみなぎった。
 伸子はあきたりない思いをもってきいているうちに、だんだん不愉快になった。猫が、犬のように飼主にこびず、ある意味での親愛感や共感なしに、冷然と飼われているそのエゴイズムが面白い、と書いているこの評論家は、この話で、皮肉な逆説として、男を食う女になって、男尊女卑を現実で裏がえしにしてやれ、といおうとしているらしく思えた。けれども、彼のひとひねりしたそういう話しぶりは、一般のききてに通用しないものだし、まして彼の論法はひたむきな向上心と観察欲にもえてここへも出席して来ている中国の女学生たちのこころにふれるものではない。伸子は、
前へ 次へ
全402ページ中114ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング