たちは、うなずくように濃い黒いおかっぱを動かし、幾分椅子の上でのり出した。
「では、これから早川先生の御話を願いたいと思います」
記者は、上座に向ってちょっとお辞儀をした。早川閑次郎が起立した。そして、服のポケットに右手のさきを浅く入れ、講演になれた態度で、微笑をふくみながら話し出した。伸子も、おとなしく耳かくしとよばれる髪に結っている頭をそちらに向けた。猫好きで有名な独身生活者で、綜合雑誌へ皮肉と進歩性のまじった論文、雑文をかくこの評論家は、どういう思想のおくりものを、これらの中国女学生たちに与えようとしているのだろう。そのころ中国の社会は、日本よりも急激に変化していて、女性の政治的なめざめも注目されていた。そういう空気の中から来ている中国の若い女性へのおくりものは、同じ時代に生きる女であるということから伸子たち居合わせる日本の婦人たちにとってもおくりものとなるわけだった。
「あなたがたのお国には、孔子という哲学者がいました。そして、儒教という非常に優秀な道徳を鼓吹して、日本も何百年という間、そのおかげをこうむって来ています」
通訳をしなければならない黒背広の小柄な人は、せっせと
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